円形脱毛症で使われるお薬

監修:なごみ皮ふ科 院長 医学博士 齊藤典充先生
野村皮膚科医院 院長 医学博士 野村有子先生

円形脱毛症の治療薬は複数ありますが、治療方法と同様に根治に至る治療薬は確立されていません。しかし、過去の臨床結果から、効果の高さやリスクなどが明らかになってきています。

ここでは、社団法人日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン2017」の策定に参加された横浜労災病院の齊藤典充先生の監修の元、使用を考慮しても良い各治療薬についてご紹介いたします。

重症の円形脱毛症治療用の新しい飲み薬

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬

円形脱毛症の病態である「自己免疫の作用によるリンパ球の毛包への攻撃」を抑える薬剤で、重症もしくは極めて重症の円形脱毛症治療用の新しい飲み薬です。内服により毛包が攻撃を受けなくなり、発毛が期待できます(※)。また円形脱毛症以外でも,通常の治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎や関節リウマチにも使用されています。

(※)2022年6月より保険適用となりました。15歳以上で頭部全体の50%以上の毛髪が脱毛し、6か月以上発毛が診られない重症円形脱毛症の患者さんが治療の対象となります。臨床試験のデータによると、重症円形脱毛症の患者さんに対しこの治療を開始36週間後には35.2%の患者さんで脱毛範囲が頭部の20%以下に縮小したという結果が得られています。

円形脱毛症を引き起こす原因の一つに、サイトカインという物質が過剰に働くことで、免疫細胞が毛穴を攻撃することが知られています。JAK阻害薬はそのサイトカインを抑えることで、毛穴を攻撃している免疫反応を取り除いて、髪の毛を生えやすくします。サイトカインのみならず、免疫細胞そのものの働きも抑えます。内服後、早ければ数か月後には髪の毛が生え始めますが、半年以上の時間がかかる場合もあります。効果には個人差がありますので、症状をていねいに観察しながら、その患者さんに合った治療方法を選択することが大切です。

JAK阻害薬は内服前に問診や血液検査、胸部X線写真の撮影などの検査が必要になります。治療を安心して続けるために、投与後も定期的な検査が必要となります。そして頻度は低いですが、咽頭炎や帯状疱疹、貧血などの副作用が現れることがあるので注意も必要です。そのため、皮膚科専門医の在籍する承認された病院やクリニックでのみ処方が可能です。

なお、JAK阻害薬は健康保険適応となりますが、4mg錠を内服した場合、保険診療3割負担で1ヶ月約44,000円と治療費が高額ですので、医療費の助成制度を受けられる可能性があります。厚生労働省のホームページ「高額療養費制度を利用される皆さまへ」に詳細が掲載されていますのでご参照ください。今まで治りにくかった重症の円形脱毛症の救世主となるかもしれません。お悩みの患者さんは、ぜひ皮膚科の先生にご相談ください。

使用を考慮しても良い内服薬(飲み薬)

抗アレルギー薬(第2世代抗ヒスタミン薬)

花粉症などのアレルギー症状を緩和する治療薬です。
アトピー素因(アトピー性疾患「アトピー性皮膚炎」、「気管支炎」、「アレルギー性鼻炎」のいずれか)を持った単発型および多発型の患者に、脱毛範囲の縮小が認められています。

セファランチン

アレルギー反応を抑制する作用や、血流を促進する作用などがある治療薬です。

脱毛斑の縮小の根拠は薄いとされていますが、国内での診療実績も多いため、単発型および多発型の治療において、他の治療と共に併用されます。
副作用として、胃の不快感や食欲不振などが発生することがあります。

グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合薬

グリチロン®という薬は、炎症やアレルギーを抑える作用があります。
科学的な検証は不十分ではあるものの、国内で多くの診療実績があるため、単発型および多発型の治療で使用されています。主な副作用として、血圧上昇や腹痛などが報告されています。

ステロイド内服

炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドの飲み薬です。
高い効果が実証されている反面、子どもへの使用は行なっておりません。また、ステロイドを飲むことをやめた後に、高い確率で脱毛が再発する危険性があります。そのため、脱毛が広範囲に広がった成人の患者のみに用いられる飲み薬です。

副作用として、肥満、糖尿病、生理不順、消化器不全などを発症する場合があります。

使用を考慮しても良い外用薬(塗り薬など)

ステロイド外用

炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドの塗り薬です。

一般的な治療法として多くの皮膚科で採用されており、国内で豊富な治療実績があります。
科学的な根拠となる研究報告がいくつも出てきており、有効性が確かめられた治療法の一つです。

塩化カルプロニウム外用(フロジン液)

市販の育毛薬にも含まれている成分で、発毛効果が認められています。

発毛効果の検証が不十分とされていますが、国内で膨大な診療実績があります。副作用としては、発汗やかゆみ、かぶれ、炎症等が発生する場合があります。

ミノキシジル外用

発毛効果が認められている薬で、血管を拡張する効果があります。
脱毛範囲を縮小する根拠は弱いとされていますが、海外で多くの診療実績ががあります。

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