円形脱毛症の治療法

監修:なごみ皮ふ科 院長 医学博士 齊藤典充先生
野村皮膚科医院 院長 医学博士 野村有子先生

円形脱毛症は、根治に至る治療法はまだ確立されていません。しかし、様々な治療法がこれまでに試みられ、それぞれの治療法の効果の高さやリスクなどが明らかになってきています。

ここでは、社団法人日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン2017」の策定に参加された横浜労災病院の齊藤典充先生の監修の元、各治療法についてご紹介いたします。

推奨される治療法

ステロイド局所注射

炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、脱毛斑に注射で注入する治療法です。

症状が改善しない単発型、および多発型の成人患者に対して使われることがあります。高い水準の発毛効果がある反面、ステロイドの副作用を考慮し、子どもに対しては行いません。また、注射時に強い痛みを伴うことと、副作用として注射部位が陥没する場合があることに注意が必要です。

局所免疫療法

人工的にかぶれを起こす化学試薬、スクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)か、ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)を使って、かぶれを起こさせることにより発毛を促す治療方法です。最初は1%ないし2%の高濃度なものをつけて感作させ、2週間後に低濃度なものを塗布、その後至適濃度まで徐々に濃度をあげて治療します。

本治療法は、比較的広範囲に脱毛している患者に対して行われます。子どもにも使用できます。約9割もの人に発毛効果があると言われていますが、かぶれやじんま疹、リンパ節腫脹などの副作用を生じることがあり、加えてアトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹がある人は、一時的に症状が悪化する事があるので注意が必要です。また、治療期間が半年から1年以上で、じっくり取り組む必要があります。

有効性があるとされている治療法ですが、日本では保険適応の認可が降りていないため、自費診療となります。

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬

円形脱毛症の病態である「自己免疫の作用によるリンパ球の毛包への攻撃」を抑える薬剤で、重症もしくは極めて重症の円形脱毛症治療用の新しい飲み薬です。詳しくはこちらをご確認ください。

行っても良い治療法

内服薬(飲み薬)の使用

下記の内服薬(飲み薬)は、円形脱毛症の治療に使用される場合があり、効能が確認されています。
詳しくは、治療薬ページをご確認ください。

外用薬の使用

下記の外用薬(湿布や軟膏など)は、円形脱毛症の治療に使用される場合があり、効能が確認されています。
詳しくは、治療薬ページをご確認ください。

冷却治療

ドライアイスや液体窒素などを脱毛斑にあて、誤作動を起こした免疫細胞の働きを抑えて、毛髪の再生を図る治療法です。治療の際は、ドライアイスを直接あてたり、液体窒素を脱脂綿や綿棒で湿布したり、スプレーしたりします。

治療の際、軽い痛みがありますが、簡便で副作用もほとんどない方法です。

紫外線療法

アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの皮膚病などに対しても行われる治療法です。
PUVA治療法、ナローバンドUVB療法、エキシマレーザー療法などがあります。

回数や頻度は症状により異なりますが、2週間に1回~6回程度、数か月にわたって治療を行います。副作用としては、紫外線を照射するため、肌の炎症からくるヒリヒリやかゆみ、ひどいときには水ぶくれが生じる場合があります。

効能については、広い範囲で脱毛する全頭型や汎発型で効果があったという報告があるため、重度の患者に使用されることがあります。なお、子どもの治療にはおすすめできません。

直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザー療法)

「スーパーライザー」と呼ばれる装置を使用し、皮膚の奥まで届く特殊な赤外線を脱毛斑に照射する治療法です。この光の波長は体の奥までも届くため、鎮痛、消炎効果で痛みと腫れがひくので、筋肉や関節の治療用としても使われています。

また、自律神経に直接照射することにより全身の血行が良くなるため、自律神経失調症の治療に使われることもあります。

簡単に治療を受けることができ、副作用も軽い点があることから、単発型や多発型の治療に使用される場合があります。

点滴静注ステロイドパルス療法

点滴により、ステロイドを3日間ほどの短期間で大量投与する治療法です。

発症後6か月以内の成人患者で、急速に進行する重症例に有効な治療法。発症後6か月以内の患者には約6割効果が見られましたが、発症後6か月以降の患者には16%程度しか効果が見られないため、発症後早期の重症患者にのみ行われます。

発症早期の重症患者に対しては高い効果が実証されている半面、子どもには成長障害が生じる可能性がありますので、行いません。

ステロイドを大量に使いますので、入院が必要となります。不眠、動悸、頭痛、微熱、倦怠感などの副作用がでる場合があります。

ウィッグ(かつら)の使用

意外と思われるかもしれませんが、スウェーデンでは、ウィッグ(かつら)は医療器具として認められています。また国内においても多発型・蛇行型・全頭型・汎発型の方の治療に、かつらの活用を考慮しても良いと言われています。直接的な治療効果はありませんが、紫外線や、物理的な衝撃から頭皮を守れることが理由として挙げられます。また、かつらを身につけることにより、普段と変わらない生活が送りやすくなることから、精神状態を改善する効能が報告されています。おしゃれの一つとして考え、楽しんで着用すると良いです。

おすすめできない治療法

シクロスポリンAを飲む

臓器移植や免疫疾患(アトピー性皮膚炎)などに使用される、免疫力を抑える飲み薬です。脱毛範囲が縮小するという報告がありますが、根拠が弱いようです。

一方で、腎機能障害などの副作用があるうえ、服用を休止した後に脱毛が再発症するケースが多いので、使用はおすすめできません。

また、紫外線治療と併用すると、皮膚がんのリスクが高まるため、注意が必要です。

漢方薬を飲む

ストレスの抑制に効果がある漢方(柴胡加竜骨牡蛎湯合など)を使用して、円形脱毛症が改善されたという報告があります。しかし、科学的な検証が不十分なため、使用はおすすめできません。

精神安定剤を飲む

精神安定剤を飲むと脱毛範囲が縮小したという報告がありますが、科学的根拠が薄く、使用はおすすめできません。

アンスラリンを塗る

皮膚病に使用される軟膏で、タールが含まれています。

発毛効果はかなり高いとされていますが、人によってはひりひりとした刺激感、副作用で肌の色素沈着や、発がんの可能性があるため、使用はおすすめできません。

星状神経節ブロック

のどにある神経「星状神経節」にごく少量の麻酔薬を注射する治療法です。この部位に、麻酔薬を注射すると、神経のツボがマヒし、緊張がゆるみます。それにより、自律神経が調子を取り戻すことから、自律神経失調症やアレルギー疾患の治療にも行われています。本治療で脱毛範囲が縮小するという弱い根拠の報告がありますが、一般的にペインクリニックの医師が行う難易度が高い(肺を傷つけるリスクがある)治療法のため、おすすめできません。

催眠療法

催眠を利用した精神療法の一種ですが、効果が十分に実証されていないことから、使用はおすすめできません。

行うべきでない治療法

鍼灸治療

鍼灸は東洋医学における国家資格として認められている治療法です。
しかし、円形脱毛症の治療においては科学的な検証が十分でなく、一部改善の報告があるものの、行うべきではありません。

分子標的治療

特定の標的(分子)を狙い撃ちにして、その機能を抑える治療法で、がん治療や自己免疫疾患などに使用される治療法です。しかし、円形脱毛症の治療においては科学的な検証が十分ではありません。一部改善の報告がありますが、一方では発毛効果が無いという報告もあり、行うべきではありません。

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